「せたがや自然環境保全の会」の活動を紹介します

 「せたがや自然環境保全の会(通称SNECS)」では区内に残る貴重な植物の保全活動を進めています。
 今回は大蔵三丁目公園のイチリンソウの移植作業についてご報告させて頂きます。
 イチリンソウは区内でも希少な春植物で国分寺崖線では大蔵三丁目公園に自生しています。しかし生育する面積は約162㎡(13m×12.5m)と少なく、近年樹林地の高木化による日照不足の影響などで少しずつ減少傾向にあります。

2018年4月イチリンソウの開花状況

そこでSNECSではイチリンソウの消滅回避に向けたリスク分散を目的に登録母体である(一財)世田谷トラストまちづくりや世田谷区、大蔵住宅町会と協働でイチリンソウの移植計画を実施しました。
2020年8月、植物の専門家である荻野氏((一財)世田谷トラストまちづくり花とみどりの専門員)をお招きし移植へ向けた勉強会、現地調査を行い区内での移植先や移植方法・時期などについて検討しました。

2020年8月現地での勉強会&環境調査

 移植先は大蔵三丁目公園からも近く国分寺崖線で類似環境を持つ成城三丁目緑地としました。成城三丁目緑地では環境調査として目視による照度の確認や気温、PH(水素イオン濃度)、土中水分量などを測定し移植適地を決定しました。作業に関しては「成城三丁目緑地里山づくりコア会議」とも調整し協働で実施することになりました。
 移植時期はイチリンソウの休眠期で比較的作業も容易な9月はじめとし、自生地への影響を最小限とした範囲で行いました。

掘り上げたイチリンソウの根茎

2020年9月に面積約0、8㎡(100㎝×80㎝)から10本程度の根茎を掘り上げて移植しました。2021年4月には移植した根茎から新芽が出ているのを確認出来ました。順調にいけば数年後に開花する予定です。今回の移植作業は生物多様性の観点から種を保全するという目的と同時に国分寺崖線の環境のつながりや人的ネットワークの大切さも学ぶことが出来ました。今後も移植したイチリンソウの生育状況などを報告していきたいと思います。移植に当たりご協力を頂きました関連機関、団体に心より感謝いたします。

2021年4月移植後の生育状況

※「せたがや自然環境保全の会(通称SNECS)」について
私たちは、国分寺崖線及びその周辺地域を主な活動のフィールドとする、トラストボランティアグループの一員です。緑地の保全や自然観察会のガイドなど、幅広く活動しています。

※※自生地の保全について
大蔵三丁目公園にあるイチリンソウの自生地は保護のため立ち入ることができません。また、現在は隣接する団地建替え工事のため閉鎖中です。来春、活動を再開する際は当ブログに保全活動へのお誘いを掲載する予定です。

(文責:SNECS栗原国男)